〔ゆきの自然を楽しむ〕
写真の説明文は中西正一先生の著書(ふるさとの人、自然とともに)の説明文をコピーさして頂いて居ます。
説明文の転載に付きましては、徳永真治元先生のご協力を頂いて居ます

当サイトの文章は、全てオリジナルです。無断複製・転載はかたくお断り申し上げます。

41「キツネノマクラ」(リンドウ科)
誰がつけたのでしょう。キツネがまくらにしてねている姿を想像するなんて・・・夢があって素敵ですね。キツネノマクラの本当の名前はツルリンドウと言います。花がリンドウに似ていてつる性の植物だからこの名前がつきました。山地の木陰に生える多年草です。花よりも紅紫色の果実が目立つので御存じの方が多いと思います。子どもの頃、この果実を取ってホオズキのようにもみながら中から汁と種を出し風船のようにして遊んだ思い出があります。果実の皮を破ると真っ白の果実と扁平でまるい沢山の種が出てきます。少し甘みのあるこの実を食べていたので中の種のこともよく知っていました。風船にして遊んだり食べたりしながら、キツネはこんなに小さなまくらをして寝るのだろうかと子ども心に心配しました。私の家の裏山は黒土で出来ています。その為キツネが穴を掘りやすく十数個のキツネの穴がありました。私は毎年、秋から冬にかけてキツネを観察していました。穴の回りに出てきて遊ぶ可愛い子ギツネに見とれながら、母さんギツネが子ギツネのまくらにキツネノマクラを用意してやる光景を想像したものです。木陰の生えて美しいキツネノマクラ、子どもの頃の思い出とともに大切にしたい花のひとつです。
42「キイロスズメバチ」(スズメバチ科)
キイロスズメバチは、家の軒下などに巣を造るハチとして知られています。このハチに刺された経験をお持ちの人も多いことでしょう。私は青年になるまで巣の中でハチは越冬すると思っていました。ある冬のことでした。山仕事をしていて腐った木の株の中で越冬しているハチを見つけたのです。また、クヌギの穴の中で越冬しているハチも見つけました。その時、初めてキイロスズメバチは巣の中で越冬するのではなく、山のあちこちで数匹ずつ越冬することを知りました。だからキイロスズメバチの巣を採ろうと思えば冬の間が最適です。巣の接着部分に糸がねを回し手前にゆっくりと引けば見事に採取することができます。ところが、キイロスズメバチの巣作りについて不思議に思うことはありませんか。初めは小さかった巣がだんだん大きくなっていきます。風船のように膨らむのならわかるのですが膨らんだりはしないので不思議です。また、キイロスズメバチは無数の幼虫を巣から連れ出して屋根一面にばらまいて殺してしまうことがあります。このことも不思議です。キイロスズメバチよりも大きい我が国最大のハチがオオスズメバチです。このハチは大木の穴や地中に巣作りをします。刺されると大変ですので注意しましょう。スズメバチの仲間は昆虫の成虫か幼虫かを餌にしています。害虫を採ってくれる益虫ですから危害を与えない限り大事にしてやりたいものです。
43「サルトリイバラ(カシワ)」(バラ科)
小豆でつくったあんこと米の粉で作るかしわ餅はめったに食べれない旬の食べ物でした。ですから、カシワの葉が大きくなるのを心待ちにしたものです。「かしわ餅を作るからカシワの葉を取っておいで」と言われると、すぐに取ってくることができました。誰でも、カシワの葉がどこにあるかちゃんと知っていたからです。私の家は、戦後の開拓農家でした。原野を開墾していくとカシワを掘り出すことがあったので、独特の形をしたカシワの根をよく手にしました。カシワの葉をじょうご状に巻いてホボロイチゴ(モミジバイチゴ)を入れたり、筒状に巻いて笛にしたり、にぎり拳の上に置いてパァンと音を出したりして遊びました。青い実が大きくなると少々しぶくても食べていました。秋から冬にかけて真っ赤に実が色付くと甘酸っぱい味がしてなかなかの御馳走でした。美味しい実なのにどうして野鳥が食べないのだろうと不思議に思っていました。カシワの葉がサルトリイバラだと知ったのは、植物図鑑で研究するようになってからのことです。サルトリイバラが密集したところに猿が入ったら、猿でも逃げられなくなったのでサルトリイバラとしたのでしょう。今では、赤い実のついたイバラを生け花にしたり、リースにしたりと、多くの人に親しまれているサルトリイバラです。
44「スハマソウ」(キンポウゲ科)
スマハマソウは雪割草との名もある代表的な早春の野草です。帝釈一帯に見られる花ですが家々の庭先にも植えられています。三つ葉に似た葉と花はとても愛らしく思わずたたずんで見入ってしまいます。帝釈一帯に咲くスハマソウは大半が白花ですが、なぜかピンクや赤色や紅紫色などの花に出会うことがあります。よくよく観察してみると白色のスハマソウの葉の色は緑色で、ピンク色のスハマソウの葉は少し赤みがかかっています。早春に咲く野草にはキンポウゲ科の仲間が多いようです。スハマソウユキワリイチゲ・フクジュソウ・ゼツブンソウ・ミスミソウ・リュウキンカ・イチリンソウ・ニリンソウなどで、どれをとってみても可憐な花ばかりです。崖の多い谷間は田畑も作れないし植林も難しい場所です。私たち人間にほとんと利益をもたらしてくれません。でも、自然に自生する美しい野草の宝庫でもあります。厳しい環境の中で花の命を懸命に咲く花に出会うとき私たち人間の心は和み心が耕されます。まだ寒さの残る早春には花に集まる虫たちも決して多くはありません少ない虫たちを招くために、これらの花は懸命に可愛く美しく咲くのでしょう。
45「イチリンソウとニリンソウ」(キンポウゲ科)
春、油木町の谷間を彩る代表的な野草です。どちらもキンポウゲ科の野草で茎の先に花を一輪付けることからイチリンソウ、二輪付けるからニリンソウと名付けられました。でも、イチリンソウなのに二輪つけたものもありますし、ニリンソウなのに三輪、四輪とつけたものもあります。菊のように花弁が多いイチリンソウを見つけた人もいます。菊ザキイチリンソウと呼ばれています。イチリンソウの方が花の命が長いようです。咲いては閉じ、閉じては咲いているうちに花もだんだん大きくなっていきます。そして、白色からピンクがかかった色に変わっていく花もあります。イチリンソウに比べ、ニリンソウの花の命は短いようです。花もイチリンソウより小さく、イチリンソウよりも湿り気の多いところを好むようです。花は誰が見ていなくても花の命を懸命に咲いていきます。春の到来と共に咲きはじめ初夏になると地上部は枯れて長い眠りにつきます。このような生活史を持つ野草のことをスプリングエフェメラル(春のはかない命の草)と呼んでいます。1年のほとんどを地下で生き、美しい花を咲かせようと力を貯え、日本の春のひとときを美しく咲く春の花の生き方に心を動かされます。
46「オオアカゲラ」(キツツキ科)
「仙養ヶ原でキツツキが子育てをしていますよ」と渋谷さんが教えてくださいました。いつもガスや灯油を配達されているので地域の様子をよく知っておられます。ありがたい。私は早速、観察にでかけました。「ケッケッケッ」と警戒して親が鳴きます。キョキョキョと雛が応えます。鳴き声からするとアカゲラかオオアカゲラだなとログハウスの片隅に隠れて巣穴に来るチャンスを待ちました。この辺りにはアカゲラ・オオアカゲラ・コゲラ・アオゲラが棲息しています。アカゲラとオオアカゲラは姿も鳴き声も似ていますがオオアカゲラの方がやや大きく脇腹に縦斑があるので見分けがつきます。隠れ待つこと30分。やっと親が巣穴にとんできました。オオアカゲラです。めったに見られない光景に私の心臓は高鳴りました。それからというもの何日も通いやっと写真に収めました。仙養ヶ原のオオアカゲラは生きた松の木に巣穴をあけていました。でも、よく見ると幹の一部が枯れています。なかなかよい木を選んだものだと感心させられました。キツツキが枯れた木をたたく音を聞かれたことはあるでしょう。あの音をドラミングと言います。一秒間に十八〜二十二回たたきます。キツツキは、争いをなくし平和に生活するために、山々に音を響かせ縄張りを主張する知恵を身につけてきたのです。
47「オトシブミ」
「先生、木の葉をくるくると巻いた物がいっぱい落ちているんだけどなんでしょうか」とおばあちゃんから電話がかかりました。「それは、きっとオトシブミですよ。巻いた木の葉をそっと開けてみてください。中から面白い物が出てきますよ」と話しました。すると、おばあちゃんは、花のこと、虫のこと、野鳥のこと等いっぱい教えてくださいました。私はお礼にオトシブミ等の標本箱を持っておばあちゃんの家を訪れました。おばあちゃんは、4〜5mmのオトシブミを見て「こんなに小さい虫が木の葉を巻くのですか」と驚いたり感心したりしておられました。虫をいっぱい見せてもらったし、自然のお話をいっぱいきかせてもらった。今日はいい一日でした」と話されるおばあちゃんの顔は生き生きと輝いていました。数日後、美しいシュクラメンの鉢植え(手造りの造花)をお礼にくださいました。そのおばあちゃんは昨年ご逝去されました。今もオトシブミを見るたびにおばあちゃんのことが懐かしく思い出されます。オトシブミの仲間は、日本に約85種が分布しています。成虫は葉を巻いて産卵する習性があり、幼虫は、その中で葉を食べて育ちます。葉を巻いた物はゆりかごと呼ばれています。ゆりかごは地上に落ちて転がっているので、それを手紙に例えて「落とし文」と名付けました。「落とし文」をそっと開いてみましょう。ゆめとロマンがありますね。*写真はオトシブミの仲間の一種でヒメクロオトシブミという。
48「オカトラノオ」(サクラソウ科)
今月はだれもがご存じのオカトラノオを紹介しましょう。オカトラノオは、山地や原野の日当たりのよい場所に普通にみられる多年草です。多数の白い小さな花を蜜につける花をよく見ていると、その可愛さに引かれて、つい、摘み採ってみたくなります。この花は、丘によく見られ、花穂が獣の尾ににていることからオカトラノオと名付けられました。オカトラノオが繁殖しているところをよく見ると面白いことに気付きます。花穂が同じ向きに傾いているということです。大抵の場合、南に傾いていることが多いようです。花穂の傾きによって方角を知ることができるのです。この辺りには、トラノオと名付けられた野草が3種類あります。みなさんご存じですか。オカトラノオ・ヌマトラノオ・ヤマトラノオの3種です。ヌマトラノオ(サクラソウ科)は、仙養ヶ原の沼地に自生していましたが、今はなくなってしまいました。でも油木町の休耕田のところどころで見ることができます。オカトラノオと違って、白い花穂が直立したかわいい花です。また、ヤマトラノオ(ごまのはぐさ科)も仙養ヶ原の原野に自生していましたが、今では絶滅してしまいました。でも、種を採取して増やしていますのでご希望の方には苗を差し上げます。紫色の可憐な花です。水揚げもよく、生け花に最適です。
49「ヤチシャジン」(キキョウ科)
ヤチシャジンは「レッドデータブックひろしま」の中で絶滅危惧種となっています。キキョウを小さくしたような可憐な花で、その昔、仙養地区にも自生していたという記述が残されています。この花は、岐阜・愛知・岡山・広島県に限って、湿地に飛び離れて分布している大陸系の多年草です。大陸と日本列島の関連を示す貴重な植物です。かつて広島大学の関 太郎教授をこの花のところに案内したことがあります。関先生は、わずかに生き残っている姿に出会われ感動され保護の重要性を一生懸命に話されました。昔は、田畑の手入れは勿論のこと、芝刈りや山そうじなど適度に人間の手が加えられていたので、湿地等も守られていました。ところが、過疎化が進んでいく中で自然環境も荒れてきています。〜「自然は人を育て人間は自然を守る」〜自然には優しい人の手が必要なのです。キキョウ科の仲間には、ヤチシャジンの他にキキョウ・サワギキョウ・シデシャジン・ソバナ等があります。いずれも夏から秋を彩る紫色の美しい花として愛されています。サワギキョウは有毒植物なので食べないように気をつけましょう。ソバナも油木町の処所で見かけることができます。紫色のこれらの花はリトマス紙の青リトマス試験紙の働きをしますので酸性の液を付けると赤く変色します。アリが出す液を花に付けるなどして子ども達に教えてやりましょう。
50「シュウメイギク」(キンポウゲ科)
シュウメイギクは漢字で秋明菊と書きます。菊と言うのでキク科の植物だと思いがちですが、キンポウゲ科の仲間です。シュウメイギクは油木や豊松の限られた場所で見ることができます。特に和宗から入った下帝釈の川原には一面にシュウメイギクが咲き見事です。いつの日か下帝釈に入られて見られてはどうでしょうか。真っ青な秋空とピンク色の花が重なりとても美しく見えます。また、一雨ごとに寒さの加わっていく秋雨に打たれる姿にも心を引かれます。ですから分布は点在し連続していることはありません。株で増やすしかないので大切にしたいものです。豊松のシュウメイギクは石灰岩の岩肌に生えていますし、油木のシュウメイギクも石灰質の石垣に生えています。下帝釈の川原は石灰岩の多い川原です。これから考えると、シュウメイギクは石灰岩と深いつながりがあるようです。花には、その花に適した環境があります。湿地に生える花は湿地に咲き、草地に生える花は草原に咲きます。環境を選ぶ花たちは環境が変わると生きていくことができません。とてもおもしろく不思議ですね。